2024年9月2日、東京都労働委員会は、ANAがジャパンキャビンクルーユニオン(JCU)と行った団体交渉が不誠実交渉であり、JCUの存在を軽視する支配介入に該当するとして不当労働行為救済命令を交付しました。
この団体交渉は、ANA客室乗務員の国内線・近距離国際線において、休憩時間がほとんどない実態の改善について行われたものです。
JCUは、国内線・近距離国際線において、労基法施行規則(労基則)32条2項に則り、勤務中に身体を休められる実質的な休憩=みなし休憩を取得させるよう要求したところ、ANAは「法を遵守し適切な運用を行っている」と回答しました。
JCUは、8時間を超える勤務であっても、10分程度の短時間の食事をとる以外は、ほとんど休みなく働いているにも拘らず、なぜ法を遵守し適切な運用を行っていると言えるのかと質問しましたが、ANAはまともに答えず、この対応が不誠実団交と認定されました。
その後、労働委員会の審問で、ANAは「地上ステイタイム(航空機が到着してドアを開いた時から、出発のためドアを閉めるまでの時間)中は上空での業務に比して、精神的肉体的に緊張度が低いので、ステイタイムは労基則32条2項に該当する(休憩に代わる)時間となる」と説明しました。
客室乗務員はステイタイム中も、乗客の降機、次便の準備、セキュリティーチェック、次便の乗客の搭乗案内などの業務をしているにも拘らず、その業務は全て休憩に代わる時間とみなすという、驚きの見解です。ANAが団体交渉でこの見解を発言すれば、職場で大きな議論を呼ぶことは明らかであり、それを避けたと言えます。
ANAはこの特異な独自の見解に基づき、客室乗務員を休憩もなく長時間労働をさせている結果、深刻な健康被害を生じさせています。一方、JALではFRM教育の中で、「国内線でも休憩を取りましょう」「食事をしっかりとりましょう」と呼びかけ、4レグをなくし3レグまでにするなど、勤務の改善を行っています。
ANAは客室乗務員の職場の実態を直視し、勤務を改善すべきです。JCUは、客室乗務員の休憩問題、編成数や疲労リスク管理など、日本で働く客室乗務員が保安要員として、安心して長く働ける環境の実現を目指し、引き続き取り組みを進めていきます。
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